青森シティ法律事務所では、離婚に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。
DV(暴力)の被害は、離婚問題の中でも特に深刻な事案です。
今回のコラムでは、DVの被害による離婚について、解説させていただきます。

DVと離婚

配偶者からの暴力のことをDV(ドメスティックバイオレンス)と言います。
DVは、殴る・蹴るなどの身体的な暴力のほかに、性的な暴力、レイプ、脅迫・暴言、ストーカー行為などの行為も含まれます。
DVは、法律上許される行為ではなく、離婚および慰謝料を請求する根拠となります。
また、身体に対する暴力または生命・身体に対する脅迫を受けた場合には、後述する保護命令の手続をとることを検討しましょう。

保護命令の申立て

保護命令とは、裁判所がDVの加害者に対し、被害者への接近・連絡の禁止などを命じる手続です。
保護命令の手続は、配偶者暴力相談支援センターまたは警察に相談のうえ、保護命令申立書を作成してDVの事実を裏付ける証拠などとともに裁判所に提出することにより、申立てを行います。
保護命令が発令されるための要件は、配偶者からの身体に対する暴力または生命・身体に対する脅迫を受けた被害者が、加害者からの(さらなる)身体に対する暴力により、生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認められること、です。
なお、保護命令が発令された場合に、DVの加害者が保護命令に違反すれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。

関係機関の利用

DVの被害に遭った場合の相談先としては、都道府県が設置する配偶者暴力相談支援センター、警察が考えられます。
緊急時における一時保護施設(シェルター)の案内を受けることができますし、上記の保護命令の申立てを行うためには、原則として事前に配偶者暴力相談支援センターまたは警察に相談することが必要となります。
一時保護施設(シェルター)は、避難場所であるため、所在地等の情報は非公開であり、配偶者暴力相談支援センター等からの紹介により入所することとなります。
また、保護命令の手続と離婚の手続を安心して進めるために、弁護士にご相談・ご依頼することを検討されるとよいでしょう。

初期対応と避難

DVの被害に遭った場合の初期対応としては、できる限り証拠を収集すること、速やかに避難すること、関係機関に相談すること、保護命令の申立てを行うこと、があります。
DVの証拠としては、怪我・あざの写真を撮影すること、病院を受診して診断書を書いてもらうこと、配偶者が暴れて部屋が散乱としていたり物が壊れていたりする状況を写真で撮影すること、暴行・暴言の様子を録音すること、などが考えられます。
また、速やかに避難することも大切であり、避難先としては実家、友人宅などのほかに、上記の一時保護施設(シェルター)が考えられます。
そして、安全確保のために、配偶者暴力相談支援センター、警察に相談のうえ、裁判所に保護命令の発令を申し立てることを検討しましょう。

離婚の手続

DVの加害者に対しては、ご自身で離婚の話を進めるにも危険が伴います。
安全に離婚の手続を進めるためには、弁護士に相手方との交渉を依頼することをお勧めいたします。
弁護士を立てることにより、ご自身の居場所を配偶者に知られることなく、安全に離婚の手続を進めていくことができます。
また、DVの加害者との離婚は、正常な話し合いが困難である場合も多く、離婚調停や離婚訴訟(裁判)により解決を図ることになるケースも少なくありません。
離婚調停や離婚訴訟は、裁判所による法的な手続であるため、法律の専門家である弁護士に対応をご依頼いただくことが推奨されます。
また、上記の保護命令の申立てについても、弁護士に任せればスムーズな対応が可能であり、安心して手続を進めることができます。

婚姻費用・慰謝料の請求

DVの被害者が加害者のもとから避難した際には、生活費の確保が問題となります。
法律上、離婚が成立するまでの間は、夫婦である以上、収入の少ない側が多い側に対して生活費の支払を請求できます。
これを「婚姻費用」と言います。
生活費を確保するためには、裁判所に婚姻費用を請求する調停を申し立てるのがよいでしょう。
また、DVの被害に対しては、慰謝料を請求することができます。
通常は、離婚調停や離婚訴訟の手続の中で慰謝料の請求を行います。
慰謝料を請求する前提として、怪我・あざの写真、病院の診断書、DVの状況を記録した日記、警察等への相談の記録などの証拠が必要となります。

弁護士にご相談ください

DVの被害による離婚では、生命・身体の安全を確保しながら、保護命令の申立て、離婚の手続、婚姻費用・慰謝料の請求などの諸手続を、確実に進めていかなければなりません。
DVと離婚の問題に詳しい弁護士に、まずはご相談いただくことをお勧めいたします。
青森シティ法律事務所の弁護士は、DVの被害による離婚の取扱経験・解決実績が豊富にございます。
DVの被害でお悩みの方がいらっしゃいましたら、安心して青森シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。

(弁護士・木村哲也)

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年月日
コラム
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