青森シティ法律事務所では、交通事故の被害に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。
交通事故の中でも、死亡事故の被害は特に深刻なものです。
大切な人の命を交通事故によって突然奪われたご遺族の悲しみや怒りは、想像を絶するものです。
このような死亡事故において、弁護士がご遺族のお力になれることは、被害者側が被った損害に対し、最大限の損害賠償金が支払われるように、弁護活動を行うことです。
今回の弁護士コラムでは、死亡事故における損害賠償請求のポイントについて、ご説明させていただきます。
1 損害賠償請求の権利者
交通事故によって被害者の方がお亡くなりになった場合には、被害者の方の法定相続人(法律で定められた相続人)が損害賠償請求の権利を相続し、加害者側に対して損害賠償を請求することができます。
誰が法定相続人となるのか、そして、各法定相続人の法定相続分(法律で定められた相続割合)については、民法の規定に従うこととなります。
例えば、死亡事故の被害者の方に配偶者と子ども2人がいる場合には、配偶者の法定相続分が2分の1、子ども2人の法定相続分が4分の1ずつとなります。
死亡事故の被害者の方に配偶者も子どももなく、両親が健在である場合には、両親の法定相続分が2分の1ずつとなります。
また、このように被害者の方本人が被った損害の賠償請求権を相続する以外にも、父母、配偶者および子ども、並びにこれらの方々と実質的に同視し得る近親関係がある方は、近親者固有の慰謝料を請求することができます。
2 死亡事故における損害賠償
死亡事故の場合に賠償請求できる損害としては、主に、治療関係費、葬儀関係費、死亡逸失利益、死亡慰謝料があります。
また、訴訟(裁判)により損害賠償を請求する場合には、弁護士費用の一部と、交通事故発生日からの法定利率による遅延損害金、を付加して請求するのが通常です。
①治療関係費
実費を請求することができます。
②葬儀関係費
150万円の限度で相当範囲の実費を請求することができるのが原則です。
ただし、職業・社会的地位・交友関係等の事情により、150万円を超える葬儀関係費の賠償が認容された例もあります。
③死亡逸失利益
後述のとおりです。
④死亡慰謝料
後述のとおりです。
3 死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、交通事故で死亡したことにより得られなくなった将来の収入のことを言います。
稼働による収入のほかに、年金収入の喪失も含まれます。
死亡逸失利益は、次の算式により計算されます。
【死亡逸失利益の計算式】
年収額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
稼働による年収の額については、交通事故発生前の現実の収入額を用いるのが原則です(ただし、将来の増収の可能性があれば、その可能性を踏まえた年収額を認定します)。
また、若年者の場合には、全年齢の平均年収を用いるのが原則です。
学生・幼児の場合には、男性は男子の全年齢の平均年収、女子は全労働者の全年齢の平均年収を用いるのが原則です。
家事従事者の場合には、女子の全年齢の平均年収を用いるのが原則です(ただし、高齢の場合には、女子の年齢別の平均年収を用いることが多いです)。
生活費控除率は、死亡により将来の生活費がかからなくなったことによる控除であり、次の数値が用いられるのが原則です。
ただし、年金部分についての生活費控除率は、下記よりも高くされるのが通常です(経験上、60%~70%とされることが多いです)。
【生活費控除率】
一家の支柱 | 被扶養者1人 | 40% |
被扶養者2人以上 | 30% | |
女子(主婦・独身・幼児を含む) | 30% | |
年少者について、全労働者の全年齢の平均年収を用いる場合には、40~50%とすることが多いです。 | ||
男子(独身・幼児を含む) | 50% |
就労可能年数は、67歳までの年数とするが原則です。
ただし、会社役員・開業医・税理士などは、70歳~75歳までとされた裁判例もあります。
また、おおむね55歳以上の高齢者は、67歳までの年数と平均余命年数の2分の1のいずれか長い方を用いるのが原則です。
そして、死亡逸失利益の計算では、就労可能年数の数値そのものを掛けるのではなく、年3%(2020年4月1日施行の改正民法における法定利率)の割合で中間利息を控除した、ライプニッツ係数という数値を使用します。
4 死亡慰謝料
慰謝料とは、交通事故により被った精神的苦痛を金銭に換算したもののことを言います。
死亡事故の場合の慰謝料としては、①亡くなった被害者の方本人の慰謝料と②近親者固有の慰謝料の2種類があります。
①亡くなった被害者の方本人の慰謝料は、法定相続人が請求の権利を相続し、加害者側に対して請求をすることができます。
②近親者固有の慰謝料は、父母、配偶者および子ども、並びにこれらの方々と実質的に同視し得る近親関係がある方に認められるものです。
父母、配偶者、子ども以外であれば、例えば、内縁関係にある方や同居の兄弟姉妹などが考えられます。
①亡くなった被害者の方本人の慰謝料と②近親者固有の慰謝料を合わせた死亡慰謝料の裁判基準の金額は、次のとおりです。
【死亡慰謝料の基準】
被害者
|
裁判基準の金額 |
一家の支柱(※)
|
2800万円 |
母親・配偶者
|
2500万円 |
それ以外の場合
(独身者、子ども等) |
2000万円~ 2500万円 |
※一家の支柱=被害者の世帯が、主として被害者の収入によって生活を維持している場合。
加害者の過失が重大であるとか、事故状況が悪質であるとか、加害者の態度が極めて不誠実であるなどの場合には、上記よりも高額の慰謝料が認められることもあります。
例えば、飲酒運転、無免許運転、極度の速度超過、ひき逃げ、証拠隠滅などの事情がある場合です。
5 過失相殺・過失割合
過失割合とは、交通事故で発生した損害に対する責任(過失・不注意)の割合のことを言います。
過失相殺とは、交通事故の被害者にも過失(不注意)がある場合に、過失割合の分だけ受領できる損害賠償金の額が減額されることを言います。
例えば、過失割合が被害者10:加害者90というケースの場合には、被害者側が請求できる損害賠償金は、被害者が被った損害額の90%にとどまることとなります。
死亡事故の場合には、物損事故や軽傷の事故と比較して損害額が大きいため、過失割合の認定いかんにより、受領できる損害賠償金の額が大きく変わってきます。
そのため、過失割合・過失相殺が争いになった場合には、慎重に検討・判断していく必要があります。
過失割合・過失相殺の検討・判断は、警察で作成された事故状況に関する刑事記録を取り寄せ、類似の事故状況に関する過去の裁判例を調査するなど、非常に専門性の高い領域となりますので、まずは交通事故に詳しい弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。
6 弁護士にご相談ください
死亡事故における損害賠償について、加害者側の保険会社が提示している賠償額は、訴訟(裁判)で認められる適正額と比較して、相当低い金額であるのが通常です。
保険会社も営利企業であるため、被害者側に対する損害賠償額を低く抑え、自社の利益を守ろうとしているのです。
ご遺族の方だけでこのような相手と話を進めることは非常に負担が大きく、またリスクもあることですので、交通事故に詳しい弁護士にまずはご相談いただくことをお勧めいたします。
また、専門家である弁護士に対応をご依頼いただくことにより、支払われる損害賠償金のかなりの増額が期待できるのが通常です。
青森シティ法律事務所の弁護士は、これまでに、死亡事故を含む交通事故について、数多くのご相談・ご依頼をお受けして参りました。
解決実績も豊富にございますので、まずはお気軽に青森シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。
(弁護士・木村哲也)
当事務所の弁護士が書いたコラムです。
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