青森シティ法律事務所では、交通事故の被害に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。
交通事故の被害に遭ったときに、骨折をしてしまうことがあります。
歩行中・自転車乗車中・バイク乗車中の事故では骨折の被害が多く、自動車同士の衝突事故の場合にも、大きな事故であれば骨折を伴うこともあります。
今回のコラムでは、交通事故による骨折について、ご説明させていただきます。

交通事故による骨折の特徴

交通事故の骨折には、以下のような特徴があります。
①治療期間が長くなる。
②治癒・症状固定まで時間がかかる。
③関節の機能障害(可動域制限)・変形障害・神経障害(痛みやしびれ)などの後遺障害が残存することがある。

骨折の事案では、12級以上の後遺障害等級が認定され、損害賠償金が高額になるケースも多いです。
適正な後遺障害等級の認定を受けることが重要となりますので、交通事故に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

骨折による関節の機能障害

骨折による関節の機能障害としては、上肢(肩~腕~手)の機能障害、下肢(股~膝~
足)の機能障害、手指の機能障害、足指の機能障害、脊柱の機能障害があります。
以下では、上肢の機能障害と下肢の機能障害について、後遺障害等級と障害の内容程度をご説明させていただきます。

【上肢の機能障害】

後遺障害等級
障害の内容・程度
1級4号 両上肢の用を全廃したもの。
5級6号 1上肢の用を全廃したもの。
6級6号 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの。
8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの。
10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの。
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの。

※「3大関節」とは、肩・肘・手の関節を指します。
※「上肢の用を全廃したもの」とは、3大関節が全て強直し、手指の全部の用を廃したものを指します。また、上腕神経叢の完全麻痺も含まれます。
※「関節の用を廃したもの」とは、①関節が強直したもの、②関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの、③人工関節を挿入置換した関節のうち、患側の可動域角度が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの、のいずれかを指します。
※「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、①患側の可動域角度が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの、②人工関節を挿入置換した関節のうち、上記「関節の用を廃したもの」の③に該当しないもの、のいずれかを指します。
※「関節の機能に障害を残すもの」とは、患側の可動域角度が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているものを指します。

【下肢の機能障害】

後遺障害等級
障害の内容・程度
1級6号 両下肢の用を全廃したもの。
5級7号 1下肢の用を全廃したもの。
6級7号 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの。
8級7号 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの。
10級11号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの。
12級7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの。

※「3大関節」とは、股・膝・足の関節を指します。
※「下肢の用を全廃したもの」とは、3大関節が全て強直したものを指し、足指の全部の用を廃したものも含まれます。
※「関節の用を廃したもの」とは、①関節が強直したもの、②関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの、③人工関節を挿入置換した関節のうち、患側の可動域角度が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの、のいずれかを指します。
※「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、①患側の可動域角度が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの、②人工関節を挿入置換した関節のうち、上記「関節の用を廃したもの」の③に該当しないもの、のいずれかを指します。
※「関節の機能に障害を残すもの」とは、患側の可動域角度が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているものを指します。

骨折による変形障害

骨折による変形障害としては、脊柱(背骨)の変形障害、その他の体幹骨(鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨、骨盤骨)の変形障害、上肢の変形障害、下肢の変形障害があります。
以下では、これらの骨折による変形障害について、後遺障害等級と障害の内容程度をご説明させていただきます。

【脊柱の変形障害】

後遺障害等級
障害の内容・程度
6級5号 脊柱に著しい変形を残すもの。
8級2号 脊柱に中程度の変形を残すもの。
11級7号 脊柱に変形を残すもの。

※脊柱の変形の程度によって、認定される等級が異なります。脊柱の変形の程度は、脊柱の後弯(脊柱が後ろに曲がること)または側弯(脊柱が横に曲がること)の程度により判断され、測定方法および判断基準となる数値が定められています。

【その他の体幹骨の変形障害】

後遺障害等級
障害の内容・程度
12級5号 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨、骨盤骨に著しい変形を残すもの。

※「著しい変形を残すもの」とは、裸体となったときに、変形(欠損を含みます)が明らかに分かる程度のものを指します。

【上肢の変形障害】

後遺障害等級
障害の内容・程度
7級9号 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの。
8級8号 1上肢に偽関節を残すもの。
12級8号 長管骨に変形を残すもの。

※「偽関節」とは、骨折部の癒合が不完全であるため、本来関節ではない部分が関節であるかのように異常可動するものを指します。
※「1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、①上腕骨の骨幹部(中央の長い部分)又は骨幹端部(骨幹部の端で骨端部に繋がる部分)に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの、②橈骨及び尺骨の両方の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの、のうちいずれかに該当するものを指します。
※「1上肢に偽関節を残すもの」とは、①上腕骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするものではないもの、②橈骨及び尺骨の両方の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするものではないもの、③橈骨又は尺骨のいずれかの骨幹部又は、骨幹端部に癒合不全を残し、時々硬性補装具を必要とするもの、のうちいずれかに該当するものを指します。
※「長管骨」とは、四肢の長い棒状の骨のことを言います。上肢の場合、肩から肘にかけての上腕骨、肘から手首にかけての橈骨、尺骨を指します。
※「長管骨に変形を残すもの」とは、①上腕骨に変形を残し、15度以上屈曲して不正癒合したもの、②橈骨及び尺骨の両方(ただし、変形の程度が著しい場合には、そのうちの一方のみでも該当する)に変形を残し、15度以上屈曲して不正癒合したもの、③上腕骨、橈骨、尺骨の骨端部(骨の端の部分)に癒合不全を残すもの、④上腕骨、橈骨、尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの、⑤上腕骨の直径が3分の2以下に減少したもの、⑥橈骨、尺骨の直径が2分の1以下に減少したもの、⑦上腕骨が50度以上回旋変形癒合(骨がねじれた状態でくっつくこと)したもの、のうちいずれかに該当するものを指します。

【下肢の機能障害】

後遺障害等級
障害の内容・程度
7級10号 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの。
8級9号 1下肢に偽関節を残すもの。
12級8号 長管骨に変形を残すもの。

※「1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、①大腿骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの、②脛骨及び腓骨の両方の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの、③脛骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの、のいずれかに該当するものを指します。
※「1下肢に偽関節を残すもの」とは、①大腿骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするものではないもの、②脛骨及び腓骨の両方の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするものではないもの、③脛骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするものではないもの、のいずれかに該当するものを指します。
※「長管骨」とは、四肢の長い棒状の骨のことを言います。下肢の場合、股から膝にかけての大腿骨、膝から足首にかけての脛骨や腓骨を指します。
※「長管骨に変形を残すもの」とは、①大腿骨又は脛骨に変形を残し、15度以上屈曲して不正癒合したもの(腓骨についても、変形の程度が著しい場合には該当する)、②大腿骨又は脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの、③腓骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの、④大腿骨、脛骨、腓骨の骨端部のほとんどを欠損したもの、⑤大腿骨、脛骨の直径が3分の2以下に減少したもの、⑥大腿骨が外旋45度以上、内旋30度以上回旋変形癒合したもの、のうちいずれかに該当するものを指します。

骨折による神経障害

骨折による神経障害(痛みやしびれ)について、認定される可能性のある後遺障害等級は、以下のとおりです。

後遺障害等級
障害の内容・程度
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの。
14級9号 局部に神経症状を残すもの。

※12級13号の認定基準は「障害の存在が医学的に証明できるもの」、14級9号の認定基準は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」となります。

弁護士にご相談ください

青森シティ法律事務所の弁護士は、交通事故に関する取扱経験・解決実績が豊富にございます。
骨折の事案についても、後遺障害等級の認定、示談交渉・訴訟(裁判)対応など、取扱実績が多数ございますので、お気軽に青森シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。

(弁護士・木村哲也)

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年月日
コラム
1 R4.7.14 交通事故の被害に遭った時の対応で気を付けてほしいポイント
2 R4.8.1 離婚と子どもの問題について(親権・養育費・面会交流)
3 R4.8.8 遺産分割の手続の流れ
4 R4.8.22 借金・債務整理の手続について
5 R4.8.29 企業・法人における問題社員対応の注意点
6 R4.9.12 交通事故における後遺障害等級の認定手続について
7 R4.9.27 離婚とお金の問題について(財産分与・慰謝料・婚姻費用・年金分割)
8 R4.10.24 遺産分割の問題は早めに解決しましょう。
9 R4.11.14 自己破産の同時廃止事件と管財事件
10 R4.12.6 企業・法人における契約書作成のポイント
11 R4.12.27 死亡事故における損害賠償請求のポイント
12 R5.1.18 離婚における財産分与
13 R5.2.13 相続における遺留分と遺留分侵害額請求の制度
14 R5.3.8 ローン返済中の住宅を維持したままの民事再生(個人再生)
15 R5.5.18 企業・法人における売掛金の債権回収の方法
16 R5.6.5 交通事故による高次脳機能障害
17 R5.6.20 離婚における慰謝料
18 R5.7.5 借金を相続しないための相続放棄
19 R5.7.18 借金・債務整理において任意整理を選択すべきケース
20 R5.8.17 企業・法人におけるクレーム対応のポイント
21 R5.9.6 交通事故による骨折
22 R5.9.27 DV(暴力)の被害による離婚
23 R5.10.16 相続争いを予防するための遺言書の作成
24 R5.10.26 自己破産における免責不許可事由
25 R5.11.1 企業・法人が従業員を解雇する際の注意点
26 R5.12.7 交通事故による脊髄損傷
27 R6.2.14 モラルハラスメント(モラハラ)の被害による離婚
28 R6.4.2 相続における不動産