青森シティ法律事務所では、地域の企業・法人様からのご相談・ご依頼を多数お受けしております。
企業・法人を悩ませる法的課題の一つに、クレーム事案への対応があります。
今回のコラムでは、企業・法人におけるクレーム対応のポイントについて、ご説明させていただきます。
1 クレーム対応の重要性
企業・法人の事業活動において、顧客等からのクレーム事案が発生してしまうことがあります。
クレーム対応は、時として経営者・担当者への負荷が大きく、事業活動に支障をきたすこともあります。
また、企業・法人がクレーム対応を誤れば、企業・法人側の対応がインターネットやSNSで拡散し、信用低下に繋がるリスクがあります。
クレーム対応は、企業・法人にとって、重要な法的課題であると言えるでしょう。
2 クレームの種類による対応
クレームには、正当なクレームと、不当・悪質なクレームの2種類があります。
正当なクレームとは、企業・法人側に落ち度があり、相手方の要求内容・要求方法が正当なものを指します。
正当なクレームに対しては、事実関係の調査、相手方への謝罪・損害賠償、担当者・責任者の処分など、適切な対応をとる必要があります。
不当・悪質なクレームとは、企業・法人側に落ち度がない場合や、相手方の要求内容・要求方法が過剰・不当な場合を指します。
不当・悪質なクレームに対しては、毅然とした態度で対応に臨むべきであり、具体的な対応のポイントは、下記のとおりです。
3 不当・悪質なクレームへの対応
以下では、不当・悪質なクレームへの対応のポイントをご説明させていただきます。
(1)複数で対応すること
一人で対応すると、精神的な負荷が大きく、判断・発言のミスが起きがちです。
複数で対応するようにしましょう。
(2)その場で回答しないこと
相手方からその場での回答を要求されても、「社内で検討して後日回答します」と返すようにしましょう。
その場で回答しようとすると、誤った判断をしてしまうことがありますし、相手方の要求がエスカレートすることも考えられます。
(3)記録を付けること
やり取りを記録に付けるようにしましょう。
可能であれば録音をしておくことで、クレームが不当・悪質であることを裏付ける証拠となります。
(4)警察に通報すること
脅迫・強要などの行為、長時間の執拗な電話、大声で威嚇するなどの行為は、犯罪行為・不法行為に該当する可能性があります。
相手方の行為がエスカレートした場合には、警察に通報することも必要です。
(5)弁護士と連携すること
クレーム対応について弁護士と連携し、弁護士に都度相談しながら対応を進めていくと安心です。
企業・法人側で手に負えない場合には、対応窓口を弁護士に移管することや、弁護士を通じて法的措置を講じることも検討するとよいでしょう。
4 不当・悪質なクレームへの法的措置
脅迫や業務妨害を行うモンスタークレーマーに対しては、法的措置を検討すべきケースもあります。
以下では、不当・悪質なクレームに対して考えられる法的措置についてご説明させていただきます。
(1)民事の法的措置
民事の法的措置としては、弁護士に対応窓口を移管し、弁護士から相手方へ警告状を送付することが考えられます。
また、相手方から脅迫や業務妨害などの加害行為を受けた場合には、裁判所に仮処分の申立てをし、加害行為の禁止命令を出してもらうことが考えられます。
さらに、相手方の脅迫や業務妨害などの加害行為により実害が生じた場合には、損害賠償請求の訴訟(裁判)を提起することも考えられますが、被った実害を具体的に主張・立証しなければならないなどのハードルがあります。
訴訟(裁判)としては、「相手方の要求に応じる義務がない」ことを裁判所に確認・確定してもらう債務不存在確認訴訟もあり、損害賠償請求訴訟よりは主張・立証の負担が少ないでしょう。
ただし、訴訟(裁判)の提起は、企業・法人にとっては大きな決断となるため、慎重に判断していく必要があります。
(2)刑事の法的措置
相手方が次のような犯罪行為をした場合には、事案によっては捜査機関(警察)に捜査・処罰を求める刑事告訴を行うことを検討するべきでしょう。
【脅迫罪】
「殺す」、「火をつける」、「ネットで晒す」、「暴力団の者を寄越す」など、害悪を告知する行為。
【強要罪】
「土下座しろ」、「謝罪文を書け」、「担当者を解雇しろ」など、脅迫・暴力を用いて義務のないことをさせる行為。
【恐喝罪】
「賠償しろ」、「慰謝料を支払え」、「迷惑料を支払え」など、脅迫・暴力を用いて金品を要求する行為。
【威力業務妨害】
大声で騒ぐ、恫喝する、壁・机を叩く・蹴るなど、業務を妨げる行為。
【不退去罪】
帰ってほしいと言われているのに、延々と居座る行為。
5 クレーム対応に関する社内体制整備
企業・法人としては、クレーム対応に関する社内体制の整備も必要です。
クレーム対応は、現場の従業員が行うことになるため、クレーム対応に関する従業員教育を実施し、従業員の資質向上を図ることが推奨されます。
また、誰がどのように初期対応をし、最終的な意思決定は誰が行うのか、重大なクレーム案件については誰がどのように意思決定を行うのかなど、クレーム対応方針を策定し、現場の従業員向けのクレーム対応マニュアルを整備することなども考えられます。
さらに、顧問弁護士など、気軽に相談できる弁護士と連携し、モンスタークレーマーに対応できる体制を整えておくと安心です。
6 弁護士にご相談ください
クレーム対応にお困りの企業・法人様は、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
青森シティ法律事務所では、クレーム対応に関する助言、クレーム案件の窓口対応・代理交渉、クレーマーに対する法的措置、クレーム対応に関する社内体制整備など、様々なサポートを提供させていただきます。
青森シティ法律事務所の弁護士は、クレーム対応に関する取扱経験・解決実績が豊富にございますので、ぜひ一度、ご相談いただければと存じます。
(弁護士・木村哲也)
当事務所の弁護士が書いたコラムです。
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