労働災害の申請

労働災害(労災)の被害に遭われた方が労災保険の給付を受け取るためには、労災申請の手続が必要です。
このページでは、労災申請の手続の流れ、労災保険給付の種類、会社が労災申請に協力してくれない場合の対応などについて、ご説明させていただきます。

労災申請の手続の流れ

1 労働基準監督署へ労災保険給付の請求書等を提出

被害者が所属する事業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ、労災保険給付の請求書などの必要書類を提出します。
労災申請の手続は、会社が代行してくることも多いのですが、労災申請に非協力的な会社もあります。
被害者側が主体的に労災申請の手続を行わざるを得ないこともありますので、労働災害に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

2 労働基準監督署による労災事故の調査

労災保険給付を受け取るためには、労働基準監督署による労災認定の審査を通過する必要があります。
傷病が業務と無関係であると判断されれば、労災申請は却下されます。
労働基準監督署は、提出された書類を精査し、被害者・遺族や会社などの関係者から事情聴取をするなど、労災事故に関する調査を行います。

3 労災保険給付の決定

労働基準監督署は、労災事故に関する調査を行った結果、労災申請の内容に問題がないと判断すれば、労災保険給付の決定を出します。
労災保険給付の決定が出されれば、労災保険給付を受け取ることができます。

労災保険給付の種類

1 療養(補償)給付

療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」の2種類があります。
「療養の給付」は、労災病院や指定医療機関等で、無料で治療を受けるという現物の給付を受け取ることを言います。
「療養の費用の支給」は、労災病院や指定医療機関等以外の医療機関で治療を受けた場合に、その治療にかかった費用が支給されるものです。

2 休業(補償)給付

労働災害の被害に遭ったために働くことができず、賃金を受け取らなかった場合には、休業の4日目から、休業(補償)給付を受け取ることができます。

3 傷病(補償)給付

療養(補償)給付を受けている被害者の傷病が1年6か月を経過しても治らず、傷病の程度が一定の障害の程度に当たる場合には、傷病(補償)給付を受け取ることができます。

4 障害(補償)給付

被害者の傷病について治療が終了した(症状固定となった)ものの、一定の障害が残った場合には障害(補償)給付を受け取ることができます。
障害(補償)給付には、障害の程度によって、障害(補償)年金と障害(補償)一時金の2種類があります。

5 遺族(補償)給付

労働災害の被害者が亡くなった場合、遺族は遺族(補償)給付を受け取ることができます。
遺族(補償)給付には、遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金の2種類があります。

6 葬祭料(葬祭給付)

労働災害の被害者が亡くなった場合、葬祭を行う遺族に対し、葬祭料(葬祭給付)が支給されます。

7 介護(補償)給付

障害(補償)給付、傷病(補償)給付の受給権を有する被害者が介護を要する状態となった場合には、介護(補償)給付を受け取ることができます。

労災保険の給付申請の期限

労災保険の給付申請には、労災保険給付の種類ごとに、申請の期限があります。
以下の期限内に申請を行わなければ、請求権が時効により消滅してしまいますので、ご注意いただければと存じます。

給付の種類
申請の期限
療養(補償)給付 療養費用を支出した日の翌日から起算して2年間
休業(補償)給付 休業した日の翌日から起算して2年間
傷病(補償)給付 申請の期限なし(労働基準監督署長が決定するため)
障害(補償)給付 治癒(症状固定)の日の翌日から起算して5年間
遺族(補償)給付 被害者が亡くなった日の翌日から起算して5年間
葬祭料(葬祭給付) 被害者が亡くなった日の翌日から起算して2年間
介護(補償)給付 介護を受けた月の翌月初めから起算して2年間

労災認定の審査が通らなかった場合の対応

労働基準監督署が労災申請を却下し、その決定に不服がある場合には、決定から3か月以内に、都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対し、審査請求(不服申立て)を行うことができます。
審査請求をしても決定が覆らなければ、審査請求を却下する決定から2か月以内に、労働保険審査会に対し、再審査請求を行うことができます。
再審査請求をしても決定が覆らなければ、裁判所に訴訟(裁判)を提起し、決着を図ることとなります。
再審査請求を行わずに、訴訟を提起することもできます。

これらの手続は、専門的で複雑なものであるため、労働災害に詳しい弁護士のサポートを受けることをお勧めいたします。

会社が労災申請に協力してくれない場合の対応

労災申請の手続は、会社が代行してくることも多いです。
一方で、労災申請に非協力的な会社もあり、被害者側が主体的に労災申請の手続を行わざるを得ないこともあります。

この点、労災申請の提出書類には、労災事故の発生年月日、労災事故の原因および発生状況などの事業主証明欄があります。
労災申請をする際には、会社に対して、事業主証明欄へのサインを求めるのが通常です。
しかし、会社が労災隠しに走るケースなども存在し、事業主証明欄へのサインを取り付けるのに難儀することもあります。

その場合には、会社に対して労災隠しが違法であることを警告しながら、労災申請への協力を強く求めていく対応が考えられます。
また、会社から事業主証明欄へのサインを得られなければ、労災申請を行うことができないというわけではありません。
会社が事業主証明欄へのサインをしてくれなかった事情などを記載した文書を添付し、会社の証明がない状態で労災申請を行うことも可能です。

会社が労災申請に協力してくれない場合には、まずは労働災害に詳しい弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。

弁護士にご相談ください

青森シティ法律事務所の弁護士は、これまでに、労働災害の事案に対応してきた実績があります。
労働災害についてご相談・ご依頼いただければ、適正な解決に向けたアドバイスとサポートを提供させていただきます。
労働災害の被害に遭われてお悩みの方は、お気軽に青森シティ法律事務所にご相談ください。

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